Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
「もう遅いぜ。内でこしらえた人は格別、店で買おうという人は、みんな七つ起きをして押掛けているくらいだ。今から行ったって間に合うめえ。お気の毒だがお熊ちゃん、遅かりし由良之助だぜ。」
「そうでしょうねえ。」と、お熊はまじめでうなずいた。「実は今戸の方へ行って断られたんですよ。」
「そうだろう。今頃どこへ行っても売切れさ。いずこも同じ秋のゆうぐれで仕方がないね。」
「でも、まあ、念のために行ってみましょう。」
別れて行こうとするお熊を、千生は又よび留めた。
「いや、お若けえの、待って下せえやし。と、長兵衛を極めるほどの事でもねえが、見すみす無駄と知りながら、汗をたらして韋駄天は気の毒だ。ここに一つの思案あり。まあ聞きたまえ。」と、彼は芝居気取りでお熊の耳にささやいた。
と、いっても、それは差したる秘密でもなく、これから方々の菓子屋や餅屋をさがして歩くまでもなく、わたしの家へ行って訊いてみろ。まだ食い残りがある筈であるから、そのわけを話して師匠とおまえの二人分を貰って来いというのであった。
前にもいう通り、千生の家は小料理屋で母のお兼のほかに料理番や女中をあわせて六、七人の家内であるから、きょうの牡丹餅も相当にたくさん拵えたのである。