Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
千鳥の店の話によると、お兼はせがれ長之助のゆくえ不明を苦に病んで、この頃は浅草の観音へ夜詣りをする。観音堂は眼と鼻のあいだの近い処であるが、時にはいっ刻ぐらいを過ぎて帰ることもある。当人は占い者へ廻ったとか、菩提寺の和尚さまに相談に行ったとか言っていたそうである。但しかの通源寺はお兼の菩提寺ではなかった。お兼の頸にまかれていたのは、有り触れた瓶のぞきの買い手拭で、別に手がかりとなるべき物ではなかった。
せがれの居どころは判らず、女あるじは急死したのであるから、千鳥の奉公人らも途方にくれた。お兼の兄の小兵衛は千住の宿で同商売をしているので、それが駈け付けて来て万事の世話をすることになった。もちろん町内の人びとも手伝って、まずはこの店相当の葬式を出したのは、二十四日の九つ(正午十二時)であった。その葬式がやがて出ようとする時、長之助の千生が蒼い顔をしてふらりと帰って来た。
「やあ、いいところへ息子が帰った。」
人びとはよろこんで、早速かれを施主に立たせようとしたが、それは許されなかった。店先にあつまる会葬者の群れの中に、手先の一人もとうから入り込んでいて、千生はすぐに引っ立てられて行った。