Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
おもよは咎めるようにまた呶鳴った。
「誰だよ。鉄作ではないか。今ごろ何しに来た。お福の幽霊に逢いたいのか。」
相手はそれにも答えないで、暗い雨のなかを抜け出してゆく足音ばかりが聞えた。そうして、それが家の前からまだ四、五間も行き過ぎまいかと思われる時に、きゃっという悲鳴がまた突然にきこえた。つづいて嘶くのか、吠えるのか、唸るのか、得体のわからない一種の叫びが闇をゆするように高くひびいた。
「あ、あれでござります。」と、おもよは俄かに悸えるようにささやいた。
もう問答の暇もない。茂左衛門はおどるように表へ飛び出すと、雨はだんだんに強くなっていた。引っかえして火縄をつける間も惜しいので、彼はその叫びのきこえた方角へまっしぐらに駈けて行くと、草鞋は雨にすべって路ばたの菜畑に転げ込んだ。一旦は転んでまた起きかえる時、彼は何物にか突き当ったのである。それが大きい獣であるらしいことを覚ったが、あまりに距離が近過ぎるので、茂左衛門は刀を抜くすべがなかった。
彼は必死の覚悟でその怪物に組み付くと、相手は強い力で振り飛ばした。振り飛ばされて茂左衛門はまた倒れたが、すぐに刎ね起きて刀をぬいた。