Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Lesen Sie 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.726 Zeichen · 90 Bildschirme
だから此のままのすがたで駆け出せばよかった。それに充分に歩くことが出来た。午後に私は一階までエレベーターでひそかに下降して、正面玄関と玄関から道路のすじみちをしらべ上げ、逃亡にまよわないように見て廻った。奥テル子は若し逃亡する時があったらタクシーはわたくしが見つけるといい、私に同腹を示した。一たいそれではお前は何のために入院しているのかと尋ねる人があったら、病いは治さなければならないが、私の意志まで干渉して貰いたくないという腹であった。玄関前の駐車場は一杯のくるまで埋まり、其の間を縫うて道路を突っ切ってタクシーの疾駆するあたりに出るのには、足が丈夫でもかなり困難なしごとであった。これは時刻からいえば夕暮前をえらび、奥テル子にくるまを見つけて貰うより外に手立はない、これらはたとえ実行されないにしてもそれらの謀りごとを頭に置くことが、私がまだ闊達であることの正体を見るようで愉快であった。
夕刊が来てその学芸欄を開くと、ああ、宇野浩二君という大きな見出しが、私の眼に一杯にはいって来た。その、ああ、という同じ仮名文字の重なったぐあいは、みんな、これを聴いてくれという筆者保高徳蔵さんの嘆いた叫びのような声がひそんでいて、私はまだそれの本文を読まずにいて、眼で硝子窓の方を眺める突然の余裕を生じた。