Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みかん

蜜柑

山本 周五郎

Lesen Sie 蜜柑 (みかん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.307 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

「たいせつのお役目を仰せつけられ、かたじけのうござります」

源四郎は涙を押しぬぐって答えた。

「身命を捨てて必ずしゅびようつかまつります」

「桑子村に帯刀の墓ができておる、途中だからまいってゆけ。……帯刀は誰よりもそちに望みをかけておった、誰よりもそちの身を案じていたぞ。このたびも帯刀が護ってくれるであろう、おろそかに思ってはならんぞ」

源四郎はあっと眼をみひらきながら、夢からさめた人のように、頼宣の顔を見あげていた。

三河ノ国桑子村の妙源寺に安藤家代々の墓所がある、寛永十二年十月はじめのある日、その墓所のまえに大高源四郎がぬかずいていた。……彼は泣いていた、いろいろな感情が胸いっぱいにつきあげてくる、しかしいまさらなにを云うことがあろう、ただ直次のまことの心づくしを、その生前に知ることのできなかったじぶんが口惜しいだけである。

しばらく噎びあげていた彼は、やがて、和歌山城の菜園から持って来た、みごとに色づいた蜜柑の一枝を墓前にささげた。

「お城で作った、ことしの蜜柑でござります、大夫。源四郎が持参いたしました。お城の蜜柑でござりまするぞ」

危篤の病床で……ことしの蜜柑がたべたかった、と云った、あのときの直次の顔が、ありありと源四郎の眼にうかんできた。