Japanische Klassiker mit Furigana
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こうもり
蝙蝠
岡本 かの子
Lesen Sie 蝙蝠 (こうもり) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.107 Zeichen · 23 Bildschirme
お涌は、ここをどことも知らぬ空を見上げた。
お涌と島谷との結婚は、近来なんとなく健康のすぐれぬお涌自身の返事が煮え切らず、※々として時期も定まらぬままに過ぎて行くうち、島谷は他の縁談に方向を求め、極めて事務的な結婚をして仕舞った。
秋になって、真黒な健康顔をして長い旅から帰って来た皆三は、家に一休みすると突然母親にこういい出した。
「今度、始めて家を離れて長旅をしてみましたが、なんとなく寂しい。やっぱり結婚でもしてみたくなりました。お涌さんを貰って頂きましょうか、お母さん」
その言葉は別だん、力の籠った云い方ではなかったが、母親には電気のように触れた。母親には、何か無理に力一ぱい自分がへし曲げていたものに最後に弾ね返されたように感じた。(やっぱりそうか)と母親は観念すると、たちまちそこに宿命に素直になる歓びさえ覚えた。
「やっぱり、そうだったのかお前」
母親の皆三にむけて微笑した眼には薄く涙さえ浮んだ。
長い年月が過ぎて行った一夏、日比野皆三博士が、学生たちを指導している間、葉山の別荘に夫人の涌子は子供たちと避暑に来ていて、土曜日毎に油壺から帰って来る良人を待受けていた。