Japanische Klassiker mit Furigana
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かにこうせん
蟹工船
小林 多喜二
Lesen Sie 蟹工船 (かにこうせん) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 61.890 Zeichen · 125 Bildschirme
袢天の袖に、カガシのように手を通しながら、漁夫が段々を上ってきて、ハッチから首を出した。首を出したまま、はじかれたように叫んだ。
「あ、兎が飛んでる。――これア大暴風になるな」
三角波が立ってきていた。カムサツカの海に慣れている漁夫には、それが直ぐ分る。
「危ねえ、今日休みだべ」
一時間程してからだった。
川崎船を降ろすウインチの下で、其処、此処七、八人ずつ漁夫が固まっていた。川崎船はどれも半降ろしになったまま、途中で揺れていた。肩をゆすりながら海を見て、お互云い合っている。
一寸した。
「やめたやめた!」
「糞でも喰らえ、だ!」
誰かキッカケにそういうのを、皆は待っていたようだった。
肩を押し合って、「おい、引き上げるべ!」と云った。
「ん」
「ん、ん!」
一人がしかめた眼差で、ウインチを見上げて、「然しな……」と躊躇らっている。
行きかけたのが、自分の片肩をグイとしゃくって、「死にたかったら、独りで行げよ!」と、ハキ出した。
皆は固って歩き出した。誰か「本当にいいかな」と、小声で云っていた。二人程、あやふやに、遅れた。
次のウインチの下にも、漁夫達は立ちどまったままでいた。