Japanische Klassiker mit Furigana
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はえおとこ
蠅男
海野 十三
Lesen Sie 蠅男 (はえおとこ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.129 Zeichen · 237 Bildschirme
帆村の手は、音もなく滑るように、懸けてあるオーバーの内ポケットの中に入った。そこには護身用のコルトのピストルが入っていた。彼はそれを取出すなり、二つに折って中身をしらべた。
「……実弾はたしかに入っている!」
こうした場合、よく銃の弾丸が抜きさられていて、いざというときに間に合わなくて失敗することがあるのだ。帆村はそこで安心してピストルをグッと握りしめた。そして抜き足差し足で、ソロソロベッドの方に近づいていった。
ベッドの上の人物は、死んだもののように動かない。
帆村は遂に意を決した。彼は呼吸をつめて身構えた。ピストルを左手にもちかえて、肘をピタリと腋の下につけた。そしてヤッという懸け声もろとも一躍してベッドに躍りかかり、白いシーツの懸った毛布をパッと跳ねのけた。そこに寝ているものは何者?
ピストルをピタリと差しつけたベッドの上の人物の顔? それは何者だったろう?
帆村の手から、ピストルがゴトリと下に滑り落ちた。
「おお――糸子さんだッ」
謎! 謎!
なんという思いがけなさであろう。
自分のベッドの上に長々と寝ている怪人物は何者だろう。それは気味の悪い屍体でもあろうかと、胸おどらせて夜具を剥いでみれば意外にも意外、麗人糸子の人形のような美しい寝顔が現われたのである。