Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme

Aozora Bunko

(妾、あの方の命の恩人なのよ。……頼母様、妾を粗末にしてはいけないわ)

つい心の中で甘えたりした。

林の中は、光と影との織り物をなしていた。木々の隙を通って、射し込んでいる陽光は、地上へ、大小の、円や方形の、黄金色の光の斑を付け、そこへ萠え出ている、菫や土筆や薺の花を、細かい宝石のように輝かせ、その木洩れ陽の通い路の空間に、蟆子や蜉蝣や蜂が飛んでいたが、それらの昆虫の翅や脚などをも輝かせて、いかにも楽しく躍動している「春の魂」のように見せた。

心に喜悦を持っている栞は、何を見ても楽しかった。

栗や柏や楢などが、その幹や枝に陽光を溜め、陽光の溜っている所だけが、生き生きと呼吸しているように見えるのも、蕾を沢山持った山吹が、卯木と一緒に、小丘のように盛り上がってい、その裾に、栗色の兎が、長い耳を捻るように動かしながら、蹲居ってい、桜実のような赤い眼で、栞の方を見ていたが、それも栞には嬉しくてならなかった。

栞は木々を縫って目的なく彷徨って行った。

一つの林が尽き、別の林へはいろうとする処に、木立ちのない小さい空地があり、そこまで来た時、

「あれ」と云って、栞は足を停めた。