Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
更けて行く夜は、次第に寒くなって来た。老人をいつまでも捨てておくことは出来なかった。二人は、躄車を押して、屋敷の方へ行くことにし、頼母は、まず、草に捨ててある刀を拾い取り、老人の背の鞘へ差してやった。それから躄車を押しにかかった。
「勿体のうございます」
栞が周章てて止めた。手が触れ合った。
「あっ」
栞の声が情熱をもって響いた。
「ああ」
思春期の処女というものは、男性のわずかな行動によって、衝動を受けるものであり、そうしてその処女が、愛と良識とに恵まれている者であったら、衝動を受けた瞬間、相手の男性の善悪を、直観的に識別け、その瞬間に、将来を托すべき良人を――恋人を、認識るものである。狂人の、孤独の父親に仕え、化物屋敷のような廃れた屋敷に住み、荒らくれた浪人者ばかりに接していた、無垢純情の栞が、今宵はじめて、名玉のように美しく清い、若い武士と、不幸な一家のことについて語り合ったあげく、偶然手を触れ合ったのであった。その一触が、彼女の魂を、根底から揺り動かし、「叫び」となって、彼女の口から出たのは、無理だとは云えまい。頼母は、栞の叫び声に驚いて、栞を見詰めた。