Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
寝静まっている旅籠からは、何んの物音も聞こえて来なかった。
立ち向かった左門と頼母
突然、隣りの部屋から、女の叫び声の聞こえて来たのは、さらにそれからしばらく経った後のことであった。(はてな?)と頼母は耳を澄ました。(変だ!)……というのは、その女の叫び声が「頼母様!」と聞こえ、「天国様を」と聞こえたからであった。しかしそれだけで、後は聞こえて来なかった。
(空耳だったかな)
そのくせ頼母は、傍らの刀を掴み、立ち上がった。襖をあけて縁側へ出た。すぐ眼にはいったのは、月光で、霜でも降ったように見える広い中庭と、中庭を距てて立っている母屋とであった。縁側を左の方へ数歩あゆめば隣り部屋の前へ行けた。そこで頼母は足音を忍ばせ、隣り部屋の前まで行き、また、耳を澄ました。たしかに人のいる気配はあったが、声は聞こえなかった。
(これからどうしたものだろう?)
不躾けに襖をあけることは出来なかった。とはいえ、女の声で、自分の名を呼び、天国様をと云ったからには、――空耳でないとして――声の主を確かめたかった。
(まさかお浦が、こんな部屋へ来ていようとは思われないが……)