Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
「出ろ! 左門!」
と頼母は叫んだ。しかし、叫んだものの、飛びかかって行こうとはせず、反対に、飛び退くと、部屋の背後の壁へ背をもたせ、刀を、例の中段に構え、眼前を睨んだ。
釣り手を切られた紙帳の角は、やわやわと撓み、やがて崩れ、今は一筋の釣り手に掲げられている紙帳は、凋んだ朝顔の花を、逆さに懸けたような形に、斜面をなして懸かっていた。
左門の姿は見えなかった。
いよいよ左門の居場所は確実に解った。やはり、最後に残った釣り手の背後――釣り手の角の背後にいるのであった。
その方へグッと切っ先を差し付け、頼母は大息を吐いた。
さよう、左門はその位置に、片膝を敷き、片膝を立て、刀を逆ノ脇に構え、最初から現在まで、寂然と潜んでいたのであった。一方は、隣り部屋と境いをなしている壁であり、一方は、閉めのこされてある襖であり、正面は紙帳である。――この三つのものによって、濃い闇を作っているこの場所は、何んと身を隠すに屈竟な所であろう。
彼は、頼母が、自分の方へは来ないで、反対の方へ進み、紙帳の釣り手を、次々に切っておとすのを見ていた。走りかかり、背後から、一刀に斬り斃すことは、彼にとっては何んでもないことであった。