Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
お浦の体は、いよいよ崖の方へはみ出した。
二人の顔はヒタと会った。
「…‥……」
「…………」
鵜烏が、川面を斜に翔けながら、啼き声を零した。
こういう事件があってから三日の日が経った。
その三日目の朝、飯塚薪左衛門の娘の栞は、屋敷を出て、郊外を彷徨った。さまよいながらも彼女の眼は、府中の方ばかりを眺めていた。連翹と李の花で囲まれた農家や、その裾を丈低い桃の花木で飾った丘や、朝陽を受けて薄瑪瑙色に輝いている野川や、鶯菜や大根の葉に緑濃く彩色られている畑などの彼方に、一里の距離を置いて、府中の宿が、その黒っぽい家並みを浮き出させていた。
(今日あたり頼母様にはお帰りあそばすかもしれない)
(いいえ、頼母様、是非お帰りあそばしてくださいまし)
山水のように澄んでいる眼には、愛情の熱が燃え、柘榴の蕾のように、謹ましく紅い唇には、思慕の艶が光り、肌理細かに、蒼いまでに白い皮膚には、憧憬の光沢さえ付き、恋を知った処女栞の、おお何んとこの三日の間に、美しさを増し、なまめかしさを加えたことだろう! 彼女は過ぐる夜、屋敷の中庭で、頼母と会って以来、それまで、春をしらずに堅く閉ざしていた花の蕾が、一時に花弁を開き、色や馨りを悩ましいまでに発散すように、栞も、恋心を解放し、にわかに美しさを加えたのであった。