Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
(烈しいお父様の苦悶が、お父様を駆って、また乱心に……)
これが栞には恐ろしく悲しいのであった。
やがて薪左衛門は弱々しく眼を開けた。その眼についたのは、右手に捧げている天国の剣であった。剣は、依然として、珠を延べたかのように、気高い、穏かな光を放し、宙に保たれていた。この剣の威徳には、煙りさえも近寄れないのであろうか? と云うのは、少しでもお父様の狂ったお心を静めてあげようと、優しい娘心から、栞は、毎日この部屋で香を焚くのであって、今も床の間に置いてある唐金の香炉から、蒼白い煙りが立ち昇ってい、その一片が、刀の切っ先をクルクルと捲いた。しかし何かに驚いたかのように、煙りの輪は、急に散り、消え、後には、暗い空間に、刀身ばかりが、孤独に厳かに輝いているではないか。
それを見詰めている薪左衛門の眼は、次第に平和になり、顔からも、悲哀や苦悶や絶望の色が消えた。
返らぬ記憶
「栞や」
と、ややあってから、薪左衛門は、おちつきのある、しみじみとした声で云った。
「わしが乱心中に、どんなことを云ったか、どんな事をしたか、話しておくれ」
栞は、お父様が沈着な態度に返ったので、ホッと安心し、