Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじん
行人
Lesen Sie 行人 (こうじん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 224.801 Zeichen · 452 Bildschirme
俥が遅れるからかね」と兄が聞いた。
「途中で水を飲むと疲れて役に立たないからだそうです」と自分が答えた。
「へえー、なぜ」と今度は嫂が不思議そうに聞いたが、それには自分も答える事ができなかった。
有馬行は犬のせいでもなかったろうけれども、とうとう立消になった。そうして意外にも和歌の浦見物が兄の口から発議された。これは自分もかねてから見たいと思っていた名所であった。母も子供の時からその名に親しみがあるとかで、すぐ同意した。嫂だけはどこでも構わないという風に見えた。
兄は学者であった。また見識家であった。その上詩人らしい純粋な気質を持って生れた好い男であった。けれども長男だけにどこかわがままなところを具えていた。自分から云うと、普通の長男よりは、だいぶ甘やかされて育ったとしか見えなかった。自分ばかりではない、母や嫂に対しても、機嫌の好い時は馬鹿に好いが、いったん旋毛が曲り出すと、幾日でも苦い顔をして、わざと口を利かずにいた。それで他人の前へ出ると、また全く人間が変ったように、たいていな事があっても滅多に紳士の態度を崩さない、円満な好侶伴であった。だから彼の朋友はことごとく彼を穏かな好い人物だと信じていた。