Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Lesen Sie 行人 (こうじん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 224.801 Zeichen · 452 Bildschirme

Aozora Bunko

自分は回診の混雑を避けるため、時間が来ると席を外して廊下へ出たり、貯水桶のある高いところへ出たりしていたが、その日は手近にある帽を取って、梯子段を下まで降りた。「あの女」がまだどこかにいそうな気がするので、自分は玄関の入口に佇立んで四方を見廻した。けれども廊下にも控室にも患者の影はなかった。

二十

その夕方の空が風を殺して静まり返った灯ともし頃、自分はまた曲りくねった段々を急ぎ足に三沢の室まで上った。彼は食後と見えて蒲団の上に胡坐をかいて大きくなっていた。

「もう便所へも一人で行くんだ。肴も食っている」

これが彼のその時の自慢であった。

窓は三つ共明け放ってあった。室が三階で前に目を遮ぎるものがないから、空は近くに見えた。その中に燦めく星も遠慮なく光を増して来た。三沢は団扇を使いながら、「蝙蝠が飛んでやしないか」と云った。看護婦の白い服が窓の傍まで動いて行って、その胴から上がちょっと窓枠の外へ出た。自分は蝙蝠よりも「あの女」の事が気にかかった。「おい、あの事は解ったか」と聞いて見た。

「やっぱりあの女だ」

三沢はこう云いながら、ちょっと意味のある眼遣いをして自分を見た。