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Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆくえふめいのしょじょさく

行方不明の処女作

宮本 百合子

Lesen Sie 行方不明の処女作 (ゆくえふめいのしょじょさく) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 2.916 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

ずっと後になってから私はその頃のことを思い出し、母にきいたが、母は一寸ばつのわるいような笑いかたで、へえそんなことがあったかしらと云い、もう自分がそれをどう始末したのか思い出すことも出来なかった。

読めばふき出すようなことが書かれているのに違いないから、それは、その帳面を母がとりあげたことも、無くしたことも残念とは思っていないのであるが、今日の心持でこの些細な事件を回想すると、そこに自ら大人の生活と子供の生活との関係というものがはっきり現れていて、寧ろその点が非常に興味ふかく思われるのである。私の育ったような中流の環境にあっては、子供は大人の知らないうちに、大人の知らないことを、大人の心づかない場所で知って、育って来ている。壮年の父と母が所謂建設期の熱をもって、活々と精力的に生活を運転している中に子供もあって、しかもそういう親達の社会的な利害打算とは無関係に子供は子供で、自身の世界をつくって行く。謂わば、大人の知らないうちに子供は大きくなっているのである。

私のその小学生の恋愛小説にしろ、決して親たちにかくれて書いていたのではないし、母もきっと毎日何度かその座敷をとおるたびに、六七寸高くなった一畳の張出しのところで鏡台と並べて私が母の小机を据え、その前に坐っているところは見かけていたであろうと思う。