Japanische Klassiker mit Furigana
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まち
街
宮本 百合子
Lesen Sie 街 (まち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.689 Zeichen · 37 Bildschirme
レオニード・グレゴリウィッチが彼女の夫であると同じそれは不変の事実だ。ああ、リョーニャ! ダーリヤ・パヴロヴナの素朴な顔はその名に燃える。彼と、今自分の体の中で次第に重く、何とも云えぬ可愛いさで重く重くと育って来る嬰児とに向って、彼女の心臓は打っている。
「神よ、護り給え――」
然し、愛するリョーニャと自分の可愛い可愛い子と三人の暮し、その行末――その先の行末――。ダーリヤの妻から母になろうとする若い胸には、こう考えて来ると、いつも、永久に消え去る一条の煙の果を眺めるような当途もない心持が湧くのであった。彼女には、レオニード・グレゴリウィッチがこれ以上立身をして、自分達の生活に変りが起ろうとも思えなかった。一生のうちに、また故郷の草原を見、丸木小屋に坐って温まって来る壁の匂いをかぐ懐かしい冬の夜にめぐり合うことも無いであろう。それでも、生活は続いている。自分達の死んだ後、けれども、国籍をも持たぬ子孫は、どこで、どうやって生きるであろうか。彼等の生活も、自分達二親の生活がそうであるように、苔のように根のついたところで、根を切られぬ限り、その日その日つづいていくのであろう。