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Japanische Klassiker mit Furigana

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けさともりとお

袈裟と盛遠

芥川 竜之介

Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし私は、やはりこの恐しい語のために、慰められたのではなかったろうか。ああ、私は、女と云うものは、自分の夫を殺してまでも、猶人に愛されるのが嬉しく感ぜられるものなのだろうか。

私はその月夜の明さに似た、寂しい、生々した心もちで、またしばらく泣きつづけた。そうして? そうして? いつ、私は、あの人の手引をして夫を討たせると云う約束を、結んでなどしまったのであろう。しかしその約束を結ぶと一しょに、私は始めて夫の事を思出した。私は正直に始めてと云おう。それまでの私の心は、ただ、私の事を、辱められた私の事を、一図にじっと思っていた。それがこの時、夫の事を、あの内気な夫の事を、――いや、夫の事ではない。私に何か云う時の、微笑した夫の顔を、ありあり眼の前に思い出した。私のもくろみが、ふと胸に浮んだのも、恐らくその顔を思い出した刹那の事であったろう。何故と云えば、その時に私はもう死ぬ覚悟をきめていた。そうしてまたきめる事の出来たのが嬉しかった。しかし泣き止んだ私が顔を上げて、あの人の方を眺めた時、そうしてそこに前の通り、あの人の心に映っている私の醜さを見つけた時、私は私の嬉しさが一度に消えてしまったような心もちがする。