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Japanische Klassiker mit Furigana

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さいごうたかもり

西郷隆盛

芥川 竜之介

Lesen Sie 西郷隆盛 (さいごうたかもり) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.892 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「もし君が他言しないと云う約束さえすれば、その中の一つくらいは洩らしてあげましょう。」

今度は本間さんの方で顔をしかめた。こいつは気違いかも知れないと云う気が、その時咄嗟に頭をかすめたからである。が、それと同時に、ここまで追窮して置きながら、見す見すその事実なるものを逸してしまうのが、惜しいような、心もちもした。そこへまた、これくらいな嚇しに乗せられて、尻込みするような自分ではないと云う、子供じみた負けぬ気も、幾分かは働いたのであろう。本間さんは短くなったM・C・Cを、灰皿の中へ抛りこみながら、頸をまっすぐにのばして、はっきりとこう云った。

「では他言しませんから、その事実と云うのを伺わせて下さい。」

「よろしい。」

老紳士は一しきり濃い煙をパイプからあげながら、小さな眼でじっと本間さんの顔を見た。今まで気がつかずにいたが、これは気違いの眼ではない。そうかと云って、世間一般の平凡な眼とも違う。聡明な、それでいてやさしみのある、始終何かに微笑を送っているような、朗然とした眼である。本間さんは黙って相手と向い合いながら、この眼と向うの言動との間にある、不思議な矛盾を感ぜずにはいられなかった。