Japanische Klassiker mit Furigana
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さいごうたかもり
西郷隆盛
Lesen Sie 西郷隆盛 (さいごうたかもり) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.892 Zeichen · 22 Bildschirme
本間さんはテエブルの下に長々と足をのばしながら、始めて楽に息がつけるような心もちになった。
が、体だけはくつろいでも、気分は妙に沈んでいる。何だかこうして坐っていると、硝子戸の外のくら暗が、急にこっちへはいって来そうな気がしないでもない。あるいは白いテエブル・クロオスの上に、行儀よく並んでいる皿やコップが、汽車の進行する方向へ、一時に辷り出しそうな心もちもする。それがはげしい雨の音と共に、次第に重苦しく心をおさえ始めた時、本間さんは物に脅されたような眼をあげて、われ知らず食堂車の中を見まわした。鏡をはめこんだカップ・ボオド、動きながら燃えている幾つかの電燈、菜の花をさした硝子の花瓶、――そんな物が、いずれも耳に聞えない声を出して、ひしめいてでもいるように、慌しく眼にはいって来る。が、それらのすべてよりも本間さんの注意を惹いたものは、向うのテエブルに肘をついて、ウイスキイらしい杯を嘗めている、たった一人の客であった。
客は斑白の老紳士で、血色のいい両頬には、聊か西洋人じみた疎な髯を貯えている。これはつんと尖った鼻の先へ、鉄縁の鼻眼鏡をかけたので、殊にそう云う感じを深くさせた。