Japanische Klassiker mit Furigana
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みえざるてき
見えざる敵
海野 十三
Lesen Sie 見えざる敵 (みえざるてき) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.777 Zeichen · 16 Bildschirme
彼は、ショーウインドーらしき大きな硝子をとおして、一部始終を眺めて暮らしているのだった。彼の前には、紛れもなく賑かな上海、南京路の雑沓が展開しているのだった。それも暁の南京路の光景から、明る陽をうけた繁華な時間の光景から、やがて陽は西に傾き夜の幕が降りて、いよいよ夜の全世界と化した光景、さては夜も更けて酔漢と、彼の手下どもが徘徊する深夜の光景に至るまで、大小洩れなく、南京路の街頭を見つくし見飽きているのだった。
どうしたことからこうなったのか、彼には始まりがよく分らなかった。
ともかくも、捕虜になったなと気がついたときは、今から十日ほど前のことだ。彼はこのショーウインドーの中に長々と伸びていたのだ。
それからこの細長いショーウインドーの中の生活が始まった。彼は一歩もその中から出されなかったのだ。
彼の目の前を過ぎゆく人に向って、SOSを叫んだ。硝子をドンドン叩いて、通行の人の注意を喚起した。しかし誰一人、彼の方を見る者がなかった。
「変だなア。なぜ、こっちを見てくれないんだろう」
彼は諒解に苦しんだ。彼の鼻の先に男や女がとおるのである。それにも拘らず、誰もこっちを向いてくれない。