Japanische Klassiker mit Furigana
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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
Lesen Sie 親鳥子鳥 (おやどりことり) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.828 Zeichen · 181 Bildschirme
「よし。何か言って御覧」
とお父さんは右の耳を塞いで身構えた。
「あなた。あなた。聞えますか?」
「そんな大きな声なら聞えるよ」
「聴覚機関は如何でございますか?」
「それぐらいなら聞える。低い声が聞えないんだ」
「厄年でございますよ。お気をつけ下さい」
「…………」
「我武者らを仰有っても通りませんよ」
「…………」
「御自分ばかりお悧巧の積りでしょう?」
「些っとも聞えない」
「聞えそうなことばかり申上げたんですが、矢っ張り余っ程……聴覚機関に故障がございますわ。困りましたね」
とお母さんは予想以上思わしくない結果に行き当った。
「何あに、構うもんか。耳の悪いのは自分の負担にならない。話し相手に大きな声を出させるばかりだ」
とお父さんは負け惜しみを言った。
耳鼻咽喉科の鎌田さんは年来のお馴染である。家の子供は皆お父さんに似て喉や鼻が悪い。片っ端から扁桃腺を切って貰っている。お父さんも時折お世話になる。聴覚機関の故障を発見した翌日は出勤前に寄ったと見えて、晩に報告があった。初老に興味を懐いている僕は無論聞き落さなかった。元来他の言うことの耳に入らない人だけれど、今から聾耳になって社の方が勤らなくては家のものが困る。