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Japanische Klassiker mit Furigana

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きおくちがい

記憶ちがい

辰野 隆

Lesen Sie 記憶ちがい (きおくちがい) von 辰野 隆 (たつのゆたか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.623 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

雪ちゃんはしくしく泣いていた。泣きやまなかった。目の前の水溜りの中には、雪ちゃんの草履の赤い鼻緒が濡れて、赤い色が水ににじんでいた。その時、見上げたNと見おろしたYの視線がはたと合った。当時十二歳の二人のいたずら小僧の顔には、驚愕とも当惑とも慙愧ともつかぬ異常な表情が現われていたに相違ない。そこで又記憶が中断されて、次の瞬間には、なお泣きやまぬ雪ちゃんが受持の女の先生に慰められながら去っていった後姿だけが、何時までも忘れられぬ印象として残った。

「俺はあの日のことを想い出すと、悪い事をしてしまった、とつくづく思う。後年、幾度か医者に訊ねて、ああいう足の指は簡単な手術で治し得ると知って安心したが、それでも何処かに悔恨に似た気持が滓のように残っていた。」

「いや、それは少し覚えちがいじゃないか」とNが訂正した。

「雪ちゃんを抱いていたのは仲間のSで、足袋を脱がせたのはOだぜ。俺たち二人は、傍で、不思議な足を見せられたので、只ぼんやり眺めていたんだ。その時『そんなものを見るもんじゃありませんッ!』とかん高い声で、女の先生から叱られた。その声の鋭さと厳しさだけを俺は身に沁みて覚えているのだがね。