Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうもんちょう
註文帳
泉 鏡花
Lesen Sie 註文帳 (ちゅうもんちょう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.770 Zeichen · 67 Bildschirme
九
「ところで聞かっしゃい、差配さまの謂うのには、作平、一番念入に遣ってくれ、その代り儲かるぜ、十二分のお手当だと、膨らんだ懐中から、朱総つき、錦の袋入というのを一面の。
何でも差配さんがお出入の、麹町辺の御大家の鏡じゃそうな。
さあここじゃよ。十九日に因縁づきは。憚ってお名前は出さぬが、と差配さんが謂わっしゃる。
その御大家は今寡婦様じゃ、まず御後室というのかい。ところでその旦那様というのはしかるべきお侍、もうその頃は金モオルの軍人というのじゃ。
鹿児島戦争の時に大したお手柄があって、馬車に乗らっしゃるほどな御身分になんなされたとの。その方が少い時よ。
誰もこの迷ばかりは免れぬわ。やっぱりそれこちとらがお花主の方に深いのが一人出来て、雨の夜、雪の夜もじゃ。とどの詰りがの、床の山で行倒れ、そのまんまずッと引取られたいより他に、何の望もなくなったというものかい。居続けの朝のことだとの。
遊女は自分が薄着なことも、髪のこわれたのも気がつかずに、しみじみと情人の顔じゃ。窶れりゃ窶れるほど、嬉しいような男振じゃが、大層髭が伸びていた。
鏡台の前に坐らせて、嗽茶碗で濡した手を、男の顔へこう懸けながら、背後へ廻った、とまあ思わっせえ。