Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たにまのしじゅうから

谷間のしじゅうから

小川 未明

Lesen Sie 谷間のしじゅうから (たにまのしじゅうから) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 3.044 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

すでに谷川の水の飛沫のかかるこずえは紅葉をして夏はいきかけていました。

とちのきも、しらかばの木も、黙々として、やがてやってくる凋落の季節を考えているごとくでありました。あたりの谷にこだまして、夕暮れを告げるひぐらしの声が、しきりにしています。

「あれから、きれいな花が咲きましたか。そして、りっぱな実がなりましたか?」と、しじゅうからは、むべに声をかけました。むべの木は、頭を振って、

「花は、あの後、じきに、情無しの風にもぎとられてしまいました。」と、答えました。そして、むべのつるが、しっかりと枯れた小枝を握っているのを見て、しじゅうからは、

「それは、なんですか?」と、たずねたのでした。

「これは、あのときのみごとなかえでの若芽です。ある日、大きな、かみきりむしが飛んできてぷつりと切ってしまいました。私は、かわいそうな小枝が、下の流れに落ちてしまわないうちに、急いで捕らえたのでした。いや、あのかわいらしい小枝が、私の手にすがったのでした。どうして、これが放せましょう?」

しじゅうからは、みんなが希望に燃えたっていた、過ぎ去った春がいまさらのごとく惜しまれたのでした。