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Japanische Klassiker mit Furigana

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とよしまさんのこと

豊島さんのこと

坂口 安吾

Lesen Sie 豊島さんのこと (とよしまさんのこと) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.619 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

「娘のために無理して探したパンスコがのこってるよ。君にあげようか」

パンスコというのは麻酔の劇薬である。私を憐んで下さったのだろう。私はしかし仙人のお嬢さんの形見の劇薬を辞退した。その日、豊島さんはカストリに酔いすぎて野原にねていて巡査が家まで届けてくれた朝であったから、私は夕方までカストリを御馳走になり、碁を常先まで打ちこまれた。仙人は酒を飲み、また飲ませながら碁をうつから、どうしても私がまける。グデン/\に酔い痴れながら夜が明けても盃と碁石を放さないのだから、俗人はとても勝てないのである。仙人の碁は飲んでも飲まなくても勝気で乱暴で奔放である。だからこッちがシラフなら怖るべき敵ではないが、仙人はシラフが万事につけておきらいだ。

死んだ太宰も、田中英光も、死ぬ直前に豊島さんをお訪ねしている。死の直前にお逢いしたくなる唯一のお人柄なのである。私は自殺するような人間ではないが、それでも死にたいような気持のときに、やっぱり思いだすのは豊島さんだ。泥んこ仙人の静かな気配をなつかしむのである。当代における本当の貴族性と云い得べきものかも知れない。太宰も田中も半獣神で半貴族で、その壁にぶつかって自滅したようなものであるが、豊島さんは彼らにとっていまわの神父のようになつかしい存在でもあり、また自殺を思い止まらせるには