Japanische Klassiker mit Furigana
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にせもの
贋物
葛西 善蔵
Lesen Sie 贋物 (にせもの) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.476 Zeichen · 43 Bildschirme
「Sは今晩の汽車で、一家を挙げて、奈良へ転居するんだそうだ、それで取りこんでいるが夕方来てくれ、紹介しようというんだ。……とにかく俺は一仕事してくる、誰か来てるようだから。君は本でも読んでいたまえ」こう言って室を出て行った。
旅館の一室が、ある本屋の仮編輯室になっていた。そこへ毎日四五人の若い作家連が寄って、分担して大部の翻訳物に従事していた。芳本もその一人であった。他にも耕吉の知った顔が一人二人いたが、芳本から話を聞いて、便所のついでに廻ってきて、耕吉の家宝を仔細らしく展げてみては、「たいしたもんじゃないか。これだけあるとだいぶ飲めるね」と言ったりした。
翌朝芳本と二人で、Sの紹介状を持って、Mといってかなり有名な日本画家を半蔵門近くの宅に訪ねて行った。Sから電話で頼んでもあったので、すぐ明るい日本室の画室へ通された。いったい日本画の大家なぞというものはかなり厭味なもったいぶったものだろうという耕吉の予想に反して、M先生はきさくな快活な調子で話した。
「S君は羨ましいですなあ。私もずいぶん引越し好きの方で、今もってそちこち引越し歩いているが、情けないことに市内に限られている。