Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.864 Zeichen · 44 Bildschirme
登に話すというよりも、自分だけで独り言を云っているような口ぶりだったし、そこに登がいることも、意識から遠のいてゆくらしい。ちょうど去定が戻って来たので、登が眼くばせをし、去定は黙って坐ったが、おくにはそれさえ気がつかないようすだった。
おくには六助の一人娘だったが、三つの年から十歳になるまで、多摩川在の農家へ里子にやられた。十のとき父親に引取られ、二年ばかりいっしょに暮したが、そこへ生みの母があらわれて、おくにを伴れ出してしまった。――あとになってからわかったのであるが、母は六助の若い弟子(それが富三郎であった)と通じて出奔し、そのためおくには里子にやられた。しかし、母親はやがておくにが欲しくなり、十二歳になったおくにをひそかに呼びだして、そのまま伴れて逃げたのであった。
「あたしは母親の味を知らなかったし、ちょうど母親の欲しい年ごろでした」とおくには云った、「あたしがおまえの生みの母だと云われ、いっしょに来ておくれと云われたときには、――ええ、あたしには否も応もありませんでした、うれしくって、夢でもみているような気持でいっしょについてゆきました」