Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.864 Zeichen · 44 Bildschirme
おくには身をちぢめ、息をころしていた。すると母が忍んで来て、彼をゆり起こし、彼はねぼけた声をあげたが、舌打ちをして起きあがった。
おくにはやはり息をころしたまま、夜具の中で身をちぢめていた。そしてまもなく、おくには気がついたのだ。母の喉からもれるその声は、初めて聞いたのではない、これまで幾十たびとなく、夢うつつのなかで聞いた覚えがある。きりきりと歯がみをする音、喉でかすれる喘ぎ、苦悶するような呻きなど、半ば眠りながら幾十たびとなく聞き、母は夢をみているのだ、うなされているのだ、などと思ったものであった。――しかしその夜、おくにはすべてのことを知った。母と彼の関係もわかったし、二年このかた、理由もなく母が怒ったり、自分に当りちらしたりするわけもわかった。富三郎には少しも愛情をもっていなかったので、嫉妬などはまったく感じなかったが、けがらわしさと厭悪とで、とつぜん激しい吐きけにおそわれ、夜具から出る暇もなく嘔吐した。
そこまで話すと、おくには「う」といって、両手で固く口を押えた。おそらくそのときの記憶がよみがえって、また吐きけを催したものであろう、しっかりと口を押えたまま、かなり長いことじっとしていた。