Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えつねん

越年

岡本 かの子

Lesen Sie 越年 (えつねん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.003 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

明子がそういってくれるので、加奈江は青山に家のある明子に麻布の方へ廻って貰った。しかし撲られた左半面は一時痺れたようになっていたが、電車に乗ると偏頭痛にかわり、その方の眼から頻りに涙がこぼれるので加奈江は顔も上げられず、明子とも口が利けなかった。

翌朝、加奈江が朝飯を食べていると明子が立寄って呉れた。加奈江の顔を一寸調べてから「まあよかったわね、傷にもならなくて」と慰めた。だが、加奈江には不満だった。

「でもね、昨夜は口惜しいのと頭痛でよく眠られなかったのよ」

二人は電車に乗った。加奈江は今日、課長室で堂島を向うに廻して言い争う自分を想像すると、いつしか身体が顫えそうになるのでそれをまぎらすために窓外に顔を向けてばかりいた。

磯子も社で加奈江の来るのを待ち受けていた。彼女は自分達の職場である整理室から男の社員達のいる大事務所の方へ堂島の出勤を度々見に行って呉れた。

「もう十時にもなるのに堂島は現われないのよ」

磯子は焦れったそうに口を尖らして加奈江に言った。明子は、それを聞くと

「いま課長、来ているから、兎も角、話して置いたらどう。何処かへ出かけちまったら困るからね」