Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
横わる者だって上がりたいだろう、上りたければこそ飛び込んだのである。いくら上がりたくても、手足が利かなくては上がれぬ。眼が暗んでは上がれぬ。胴に穴が開いては上がれぬ。血が通わなくなっても、脳味噌が潰れても、肩が飛んでも身体が棒のように鯱張っても上がる事は出来ん。二竜山から打出した砲煙が散じ尽した時に上がれぬばかりではない。寒い日が旅順の海に落ちて、寒い霜が旅順の山に降っても上がる事は出来ん。ステッセルが開城して二十の砲砦がことごとく日本の手に帰しても上る事は出来ん。日露の講和が成就して乃木将軍がめでたく凱旋しても上がる事は出来ん。百年三万六千日乾坤を提げて迎に来ても上がる事はついにできぬ。これがこの塹壕に飛び込んだものの運命である。しかしてまた浩さんの運命である。蠢々として御玉杓子のごとく動いていたものは突然とこの底のない坑のうちに落ちて、浮世の表面から闇の裡に消えてしまった。旗を振ろうが振るまいが、人の目につこうがつくまいがこうなって見ると変りはない。浩さんがしきりに旗を振ったところはよかったが、壕の底では、ほかの兵士と同じように冷たくなって死んでいたそうだ。