Japanische Klassiker mit Furigana
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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
Lesen Sie 踊る地平線(上) (おどるちへいせん) von 谷 譲次 (たにじょうじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 168.926 Zeichen · 332 Bildschirme
しかし、問題は水である。
下宿人の靴へ、しかもその片方へ、おかみさんが水をいっぱい注ぎこんでおこうとは、どうしても考えられない。が、事実は事実だ。このとおりいっぽうの靴に満々と水がみたされて、しかもかなり長時間そこに溜っていた証拠には、内側の皮のいろが水に溶けて、それはうすい黄味を帯びた透明な液体だった。ついでだが、四、五日まえにリジェント街のマンフィルドで買ったばかりの新しい靴なのだ。
『まあ! 何でしょう? あなた自分で入れたんじゃないわね! こんなところへ水を。』
『莫迦な! 誰が靴へ水をつぐやつがあるものか。知らないよそんなこと。』
『だって、変じゃあありませんか――。』
『変だとも――大いにへんだとも!』
おなじことを繰り返しながら、私たちはいつまでも両方から靴を覗きこんでいるだけだった。
『ほんとにただの水でしょうか?』
しばらくして彼女が言った。私は鼻を近づけてにおいを嗅いでみた。無臭だ。やはり、水はただの水らしい。が、そのただの水が、どうしてこの部屋のこの靴の片っぽにこんなにあふれんばかりに存在することになったのか?――私は、反射的に仰向いて真上の天井を見た。