Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

みなげきゅうじょぎょう

身投げ救助業

菊池 寛

Lesen Sie 身投げ救助業 (みなげきゅうじょぎょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.938 Zeichen · 12 Bildschirme

Aozora Bunko

男はそんなことを少しも気づかないように、「もう一足遅かったら、死なしてしまうところでした」と巡査に話している。それは、老婆が幾度も巡査にいった覚えのある言葉であった。そのうちには人の命を救った自慢が、ありありと溢れていた。

老婆は老いた肌が、見物にあらわに見えていたのに気がつくと、あわてて前を掻き合せたが、胸のうちは怒りと恥とで燃えているようであった。見知り越しの巡査は「助ける側のお前が自分でやったら困るなあ」というた。老婆はそれを聞き流して逃げるように自分の家へ駆け込んだ。巡査は後から入ってきて、老婆の不心得を諭したが、それはもう幾十遍もききあきた言葉であった。その時ふと気がつくと、あけたままの表戸から例の四十男をはじめ、多くの弥次馬がものめずらしくのぞいていた。老婆は狂気のように駆けよって、激しい勢いで戸を閉めた。

老婆はそれ以来、淋しく、力無く暮している。彼女には自殺する力さえなくなってしまった。娘は帰りそうにもない。泥のように重苦しい日が続いていく。

老婆の家の背戸には、まだあの長い物干竿が立てかけてある。しかし、あの橋から飛び込む自殺者が助かった噂はもうきかなくなった。