Japanische Klassiker mit Furigana
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からだ
躯
徳田 秋声
Lesen Sie 躯 (からだ) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.857 Zeichen · 14 Bildschirme
「私も花をあんなものにくれておくのは惜しいでやすよ。多度でもないけれど、商売の資本まで卸してやったからね」と爺さんは時々その娘のことでこぼしていた。
「お爺さんなんざ、もう楽をしても好いんですがね。」
上さんはお茶を汲んで出しながら、話の多い爺さんから、何か引出そうとするらしかった。子供はもう皆な奥で寝てしまって、二つになる末の子だけが、母親の乳房に吸いついた。勤め人の主は、晩酌の酔がまださめず、火鉢の側に胡座をかいて、にやにやしていた。
「どうして未だなかなか。」
「七十幾歳ですって?」
「七十三になりますがね。もう耳が駄目でさ。亜鉛屋根にパラパラと来る雨の音が聞えなくなりましたからね、随分不断に使った躯ですよ。若い時分にゃ宇都宮まで俥ひいて、日帰りでしたからね。あアお午後ぶらぶらと向を出て八時なら八時に数寄屋橋まで著けろと云や、丁と其時間に入ったんでさ。……ああ、面白えこともあった。苦しいこともあった。十一の年に実のお袋の仕向が些と腑におちねえことがあって、可愛がってくれた里親の家から、江戸へ逃げて来てから、色々なことをやりましたが、火事にも逢や、女房にも死別れた。