Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ぐんこくかようしゅう
軍国歌謡集
山川 方夫
Lesen Sie 軍国歌謡集 (ぐんこくかようしゅう) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.655 Zeichen · 80 Bildschirme
私は、その夜の自分のいたずらは、彼にはいうまいと思った。もし私が女の顔を見てしまったことを告げたら、そのせいで二度と歌が聞こえてこなかったらこの気違いは私を殺すかもしれない、と私は思ったのだ。
大チャンは、二階にもついている流しで私の食器を洗いながら、さもたのしげにひどい音痴の鼻歌を歌っていた。そして、私に向ってうれしそうに笑いかけて、片目をつぶったりしていた。とうてい、私にはその彼にいたずらを告白する勇気はなかった。
「ああ疲れた。今日は三回も殺されちゃってね」と大チャンは座敷にもどるなりそういい、小さな茶箪笥から砂糖の缶を出すと、二匙ほどをペロリと舐めた。「疲れをとるには糖分がいちばんです」そして、声をひそめて私の耳にいった。「いいですか? 明日もよく聞いといて下さいよ。明日はね、きっと潜水艦の歌です。ゴーチン、ゴーチン、ガイカが上りゃ、っていうあれ。明日は、きっとあの歌が聞こえてきますからね」
もちろん、私は大チャンの「霊感」などを本気で信じたわけではない。私は、狂気や感傷にたいしては、冷笑的な態度をとるのを習慣としていたのである。
しかし、私はその夜の大チャンには、いちがいに笑いとばすことのできない迫力、薄気味のわるい奇妙な真実のようなものを感じていた。