Japanische Klassiker mit Furigana
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てんき
転機
伊藤 野枝
Lesen Sie 転機 (てんき) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.656 Zeichen · 67 Bildschirme
私はとうとう懐から紙を出して、よほど乾いてきた泥をふいて草履をはいた。二人はやっとそれで元気を取返して歩き出した。
日暮れ近い、この人里遠い道には、私達の後になり先になりして尾いてくる男が一人いるだけで、他には人の影らしいものもない。空はだんだんに低く垂れてきて、いつか遠くの方は、ぼっと霞んでしまっている。遠く行く手の、古河の町のあたりかと思われる一叢の木立の黒ずんだ蔭から、濃い煙の立ち昇っているのが、やっと見える。風はだんだんに冷たくなって道の傍の篠竹の葉のすれ合う音が、私達の下駄の音と、もつれあってさびしい。二人はS家の様子や主人の話など取りとめもなく話しながら歩いた。
「あの主人は大分しっかりした人らしいのね。だけど後から来たおじいさんは、本当に意気地のない様子をしていたじゃありませんか。」
「ああ、もうあんなになっちゃ駄目だね。もっとももう長い間ああした生活をしてきているのだし、意気地のなくなるのも無理はないが――あそこの主人みたいなのは残っている連中の内でも少ないんだろう。皆、もう大抵はあのじいさん見たいのばかりなんだよ、きっと。残っているといっても、他へ行っちゃ食えないから、仕方なしにああしているんだからな。