Japanische Klassiker mit Furigana
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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
Lesen Sie 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.469 Zeichen · 157 Bildschirme
湊屋仁三郎は仰臥したまま黙ってうなずいた。やっと眼をすこしばかり開いて、布団の裾の方の箪笥の上の小箪笥を腫れぼったい指で指すので、その中を探してみると手紙が一パイ詰まっている。それが皆、長崎から来た女文字の手紙ばかりで、金釘流の年増らしいのは母親の筆跡であろう。若い女学生らしいペン字は娘の文章らしかった。焼野の雉子夜の鶴……為替の受取なぞがチラチラ混っている。そこで一同の中から二人の代表が選まれて、その手紙の主を長崎へ迎いに行く事になった。
その手紙の主は仁三郎が長崎に居る時分に関係していた浮気稼業の女であったが、なかなか手堅い女で、仁三郎と別れた後に、天主教の信仰に熱中し、仕送って来た金で一人の娘を女学校に通わせて卒業させていたものであった。
湊屋仁三郎の余命がモウ幾何もない。だからタッタ一人の血のキレとして残っている娘にアトを継がせたいために迎えに来たと二人の代表が説明すると、彼女は娘と手を執り合って泣き出したので、二人の代表が覚悟の前ながら相当貰い泣きさせられた。しかしここに困ることには天主教の教理として、母親と父親が神様の御前で正式の結婚式を挙げていない限り、娘と親子の名乗りをさせる訳に行かない事になっている。