Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きんせいかいじんでん

近世快人伝

夢野 久作

Lesen Sie 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.469 Zeichen · 157 Bildschirme

Aozora Bunko

「オイ。奈良原。今度こそ斬られるぞ」

「ウン。斬るつもりらしいのう」

「武士というものは死ぬる時に辞世チュウものを詠みはせんか」

「ウン。詠んだ方が立派じゃろう。のみならず同志の励みになるものじゃそうな」

「貴公は皆の中で一番学問が出来とるけに、嘸いくつも詠む事じゃろうのう」

「ウム。今その辞世を作りよるところじゃが」

「俺にも一つ作ってくれんか。親友の好誼に一つ頒けてくれい。何も詠まんで死ぬと体裁が悪いけになあ。貴公が作ってくれた辞世なら意味はわからんでも信用出来るけになあ。一つ上等のヤツを頒けてくれい。是非頼むぞ」

流石の豪傑、奈良原少年も、この時には松浦少年の無学さが可哀そうなような可笑しいようで、胸が一パイになって、暫くの間返事が出来なかったという。

一方に盟主、武部小四郎は事敗れるや否や巧みに追捕の網を潜って逃れた。香椎なぞでは泊っている宿へイキナリ踏込まれたので、すぐに脇差を取って懐中に突込み、裏口に在った笊を拾って海岸に出て、汐干狩の連中に紛れ込むなぞという際どい落付を見せて、とうとう大分まで逃げ延びた。ここまで来れば大丈夫。モウ一足で目指す薩摩の国境という処まで来ていたが、そこで思いもかけぬ福岡の健児社の少年連が無法にも投獄拷問されているという事実を風聞すると天を仰いで浩嘆した。