Japanische Klassiker mit Furigana
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まよいみち
迷い路
小川 未明
Lesen Sie 迷い路 (まよいみち) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.159 Zeichen · 9 Bildschirme
「真実の母さんてば……二郎さん、お前さんはどうかしていますね、きっと狐にばかされて此処へ来たのですよ。」
と、後は何かぶつぶつと口の中で独言をいうて、草藪の中を分けて行きます。二郎は悲しくなって、涙ぐんで黙って後についてまいりました。夜嵐は杉の木の梢に鳴り渡って、泣くように悲しい音を出す胡弓は、たえだえに聞かれるのであります。
「二郎ちゃん!」と一声何処かで声がする。二郎は歩みを止めて佇ずみました。誰れか自分の名を呼んだなと思いましたけれど、それっきり聞こえませんでした。余程来たかと思う時分に杉林の奥の方で太鼓の音がまたしても聞こえます。振り向くと、またしても、紅、青、紫の燈火が美しう輝やいていて、お祭りの賑かな景色が見えて、人通りの混雑ている中に此方を向いて手招きをする女はたしかに自分の死んだ母親の顔であります。
「お母さん!」と、思い存分に叫きますと、その声は木精にひびいて確かに母さんの耳にも聞えたのです。乞食は不意に後を向いて「やかましい。」と言いざまに持っている胡弓で二郎を力存分に打ちました。胡弓の柄はぽっきりと三つばかりに折れたかと思うと、物凄い夜嵐の音も、怒れる乞食の姿も美しいお祭の景色も総べて消えてしまって、いつしか二郎は月明の下に我が家の前に立っていたのであります。