Japanische Klassiker mit Furigana
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ついおく
追憶
宮本 百合子
Lesen Sie 追憶 (ついおく) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.363 Zeichen · 35 Bildschirme
若し彼が今日まで居、私も又今通りに生育して来たものとすれば、彼と私との間には互に辛い争闘を起さなければならなかったろうし又小さかった時分の種々の思い出に苦がい涙を味わせられた事であったろう。
私は正直に打ちあける。
彼の日の彼の時に彼が去ったと云う事は互のために誠によい事であった。
私は今彼に久遠の愛情を感じ、彼によって与えられた静かな愛を心の裡に保ち続けて居られる。
二つの霊の交通は彼の時の純なまま愛に満ちたまま何物にも色付けられる事なしに、墓に入る日まで私の胸に響き返る事が出来るのである。
大変深く切った疵も少しずつなおりかけて来ると、独りでボツボツと食べる病院の飯は不美味いと云ってはお昼頃大きな繃帯で印度人の様に頭を包いた叔父がソロソロと帰って来る様になった。
その頃は長かった髪も頭の地の透く程短かく散斬りにし、頬の肉が前より一層こけたので、只さえ陰気であった顔は一倍凄くなった。
黒っぽい木綿の着物に白い帯をした彼が、特別にでも自分だけは粗末な品数の少ない食卓にしてもらって、子供達の話や母の慰めを満足したらしく聞きながら、一口ずつ噛みしめて食べて居た様子がありありと目に浮ぶ程である。