Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆうどうえんぼく

遊動円木

葛西 善蔵

Lesen Sie 遊動円木 (ゆうどうえんぼく) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.604 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

ひとりで飲む気になるのである。

「浪子さんと言っちゃいけないだろうか?」

「いけないよ……」

「なんて言うの? 奥さんと言うのもあまり若いんで、少し変じゃないか?」

「そんなことないよ。やっぱし奥さんと言ってやってくれたまえな」と、彼は言った。

こうしたところにも、彼の優しい心づかいが見られて、私はこの年下の友だちを愛せずにいられなかった。しかし私には、美しくて若い彼の恋人を奥さんと呼ぶのは何となくふさわしくないような気がされて、とうとう口にすることはできなかった。

私たちは毎日打連れて猿にお米をくれに行ったり、若草山に登ったり、遠い鶯の滝の方までも散歩したりして日を暮した。鹿どもは毎日雨戸をあけるのを待ちかねては御飯をねだりに揃ってやってきた。若草山で摘んだ蕨や谷間で採った蕗やが、若い細君の手でおひたしやお汁の実にされて、食事を楽しませた。当もない放浪の旅の身の私には、ほんとに彼らの幸福そうな生活が、羨ましかった。彼らの美しい恋のロマンスに聴き入って、私はしばしば涙を誘われた。私はいつまでもいつまでも彼らのそばで暮したいと思った。が私にはそうしてもいられない事情があった。