Japanische Klassiker mit Furigana
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かじょうのいしき
過剰の意識
中井 正一
Lesen Sie 過剰の意識 (かじょうのいしき) von 中井 正一 (なかいまさかず) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.259 Zeichen · 5 Bildschirme
朝の満員の省線電車の中にラグビーのごとく突入して、ひしめくおたがいの中にわきいでる無意味な憎しみ、肌と肌をこんなに密着しながら、顔と顔を、こんなに寄せあいながら、おたがいに理由なく、水のようにみなぎっている憎悪の中に沈みゆられているのである。
「おはよう」というかわりに、東京では数百万の人がこの憎しみの中に浸され、「おやすみ」というかわりに、また数百万の人がこの哀しみの中にもまれて、その一日を過ごすのである。歴史が始まって、こんなかたちの人間の集合があったであろうか。お祭にせよ、戦争にせよ、もっと散らばり、もっとはっきりした感情の理由と自由をもっていた。
ただ過剰であることの理由で、こんなに憎みあっている人間の集合は、いずれの文化段階にも存在しなかったであろう。過剰の中に、さらに過剰たらんとして突っ込んでいく朝な朝な、夕な夕なの東京の人間集合、日本知識人の意識機構「意識の過剰」の、一つの象徴であるかのようである。何か過剰なるもの、こころを、これくらいあらわしているものはないであろう。
私は一つの童話を思い起す。強い力の巨人があった。彼は大地に身を置いているかぎり、その力を失わない。