Japanische Klassiker mit Furigana
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みちづれ
道づれ
宮本 百合子
Lesen Sie 道づれ (みちづれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.491 Zeichen · 41 Bildschirme
「奥さん、見て下さい」
と云った。
「どんなのがいいのかしら」
ケースの上に、ぐるぐる廻して選べるようにしてある分を、帯止めでも廻して見るように見たが、これぞと目をひくのがないらしく、
「あなたは地味な方が似合うのね」
また、ケースの方へ漫然とうつった。それは瑛子であった。ふだん誰のためにもネクタイなどを選んで買ったことがなかったので、こうして田沢に似合うのをと思っても、何だか見当がつきかねるのであった。年の割に化粧の濃い独特の強さと俗っぽさと美しさとの混りあった瑛子の華やかな顔は微かに上気していて、馴れぬ買物をしようとしている女の誰でもがあらわす昂奮とはまた異ったはにかみを浮べている。
細そりとしなやかな体つきの若い女店員がガラス・ケースのあっち側に立っていた。指の節が柔かく窪んで、自然な表情を具えている手を動かして、客をまごつかせない心づかいでその辺をしずかに整理している。瑛子は、
「ちょっと」
と、その女店員を呼んだ。
「その二側目の右から三つめのを見せて下さいな」
「これでございますか」
「ええ、そう」
それは、トゥイード風な茶と緑と黄の混った織物で、わるい趣味ではなかったが、田沢がカラーのところにあててこちらを向くと、蒼白い顔色や眼鏡とその織物との間にそぐわないものが生れた。