Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme
日が暮れて行く頃のように、四辺がしんとしている。馬車がいま絶壁の上を行くのだ。
そのうちにちらちらと雪が降って来た。
「雪か!」といま迄、疲れたかしてものを言う人もなかった車の中で誰かが言った。
雪がしだいに降りしきって来た。私達が急いで垂幕を下した狭い車の中が俄かに呼吸がつまるようだ。
「これじゃ、盛岡からの役者も明日はどうかな。」と老人の顔を見て、商人体の男が言った。
私は折ふし、垂幕を上げて見た。あとからくる荷馬の顔に雪がしとしとと降りかかって、冷たそうに濡れていた。
車の中では老人と商人体の男とのあいだにこんどくる歌舞伎芝居の噂がはじまった。盛岡での人気や、役者の技量などについてしきりと話し合っていたが、しまいに老人が「遠野のものは一体に芝居好きだもの……」と言った。この言葉が私には妙に心に止った。芝居好きな町……。
雪がまた止んだ。私は急いで垂幕を上げた。冷たい風がすっとはいってくる。行手をすかして見ると、道が山の向うへ廻っていて、前の馬車が見えなかった。
私達の馬車も、その道を上り切ると、駆け出した。私は舌をあらしているのに懲もせず、煙草を取り出して火をつけた。