Japanische Klassiker mit Furigana
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こうがいせいかつのいちねん
郊外生活の一年
岡本 綺堂
Lesen Sie 郊外生活の一年 (こうがいせいかつのいちねん) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.728 Zeichen · 8 Bildschirme
元来の地味がこの花に適しているのであろうが、大きい木にも小さい株にも皆めざましい花を着けていた。わたしの庭にも紅白は勿論、むらさきや樺色の変り種も乱れて咲き出した。わたしは急に眼がさめたような心持になって、自分の庭のうちを散歩するばかりでなく、暇さえあれば近所をうろついて、そこらの家々の垣根のあいだを覗きあるいた。
庭の広いのと空地の多いのとを利用して、わたしも近所の人真似に花壇や畑を作った。花壇には和洋の草花の種を滅茶苦茶にまいた。畑には唐蜀黍や夏大根の種をまき、茄子や瓜の苗を植えた。ゆうがおの種も播き、へちまの棚も作った。不精者のわたしに取っては、それらの世話がなかなかの面倒であったが、いやしくも郊外に住む以上、それが当然の仕事のようにも思われて、わたしは朝晩の泥いじりを厭わなかった。六月の梅雨のころになると、花壇や畑には茎や蔓がのび、葉や枝がひろがって、庭一面に濡れていた。
夏になって、わたしを少しく失望させたのは、蛙の一向に鳴かないことであった。筋向うの家の土手下の溝で、二、三度その鳴き声を聴いたことがあったが、そのほかには殆ど聞こえなかった。