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Japanische Klassiker mit Furigana

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きょうどてきみかく

郷土的味覚

寺田 寅彦

Lesen Sie 郷土的味覚 (きょうどてきみかく) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.946 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

自分の五歳の頃から五年ほどの間熊本鎮台に赴任したきり一度も帰らなかった父の留守の淋しさ、おそらくその当時は自覚しなかった淋しさが、不思議にもこの燈下の寒竹の記憶と共に、はっきりした意識となって甦って来るのである。

虎杖もなつかしいものの一つである。日曜日の本町の市で、手製の牡丹餅などと一緒にこのいたどりを売っている近郷の婆さんなどがあった。そのせいか、自分の虎杖の記憶には、幼時の本町市の光景が密接につながっている。そうして、肉桂酒、甘蔗、竹羊羹、そう云ったようなアットラクションと共に南国の白日に照らし出された本町市の人いきれを思い浮べることが出来る。そうしてさらにのぞきや大蛇の見世物を思い出すことが出来る。

三谷の渓間へ虎杖取りに行ったこともあった。薄暗い湿っぽい朽葉の匂のする茂みの奥に大きな虎杖を見付けて折取るときの喜びは都会の児等の夢にも知らない、田園の自然児にのみ許された幸福であろう。これは決して単なる食慾の問題ではない。純な子供の心はこの時に完全に大自然の懐に抱かれてその乳房をしゃぶるのである。

楊梅も国を離れてからは珍しいものの一つになった。