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Japanische Klassiker mit Furigana

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きょうしゅう

郷愁

佐左木 俊郎

Lesen Sie 郷愁 (きょうしゅう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.473 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

故里を去る時には、その意志を貫かないうちは、石に噛りついても帰らないはずであった。

併し、私も彼も、もう……。

その月の末に、私は彼が郷里に帰ったということを聞いた。もう再び東京には出て来ないつもりだということをも聞いた。

併し、彼の意志の弱かったことを誰が嘲い得よう? 故郷を持っている人々、そして都会の無産者の生活を知っている人々は、誰も嘲うことは出来ないはずだ。

私はその後も、折々停車場へ出掛けて行った。その帰り途、私はきっと、あの時彼が歌ったあの歌を、低声で歌って見たものであった。

停車場の、地図に指あて故里と

都の距離をはかり見るかな。

この歌を私は幾度も繰り返した。繰り返しているうちに、私の歌はいつか、泣き声になっていた。そして、睫毛に涙のちかと光っているのを意識したものであった。

今では、もう停車場へ出掛けるようなことはなくなった。

けれども、夏が来て、八百屋の店頭に赤いトマトオが積みあげられ、水色のキャベツが並べられ、白い夏大根が飾られる頃になると、私は今でも、彼のあの歌を思い出すのである。

――大正十五年(一九二六年)『若草』十二月号――