Japanische Klassiker mit Furigana
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とかいのゆうき
都会の幽気
豊島 与志雄
Lesen Sie 都会の幽気 (とかいのゆうき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.559 Zeichen · 21 Bildschirme
危い! と思う途端に、彼はぽんと机を蹴飛ばして、そこにぶらりと下ってしまった。びくりとも動かないで、死骸になって吊されている。それが不思議にも私自身だった。いや俺じゃあないと思いながらも、やはり私自身だった。しまった! と声に出たかどうか知らないが、力限りに叫ぶ拍子に、私はふっと眼を覚した。見廻すと、覆いをした電燈の薄暗い光に照されてる室は、いつもの室と何の変りもなく、床の間にはやはり呉竹の軸が掛っており、上の落掛は白々と柾目を見せていた。その平素通りな有様が、却て妙に心をそそって、私は頭から布団を被ってしまった。長く寝つかれなくて、布団の中で幾度も寝返りをした。
翌朝遅く、朝日の光がぱっとさしてる頃に、私は眼を覚して起上った。夢のことはもう遠くへ置き忘れて、平気で朝食を済してから、晴々とした日の光がさしてるうちにと思って、気の向く方へ出歩いてみた。一寸球を突いて、午後は賑やかな大通を歩き廻り、帰りに友人の家へ寄って碁を始め、夕食の馳走にまでなったが、帰り途のことが気になり出して、まだ暮れて間もない慌しい街路を、怪しい幽気にも出逢わず、無事に下宿の室まで帰ってきた。