Japanische Klassiker mit Furigana
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とかいのゆうき
都会の幽気
豊島 与志雄
Lesen Sie 都会の幽気 (とかいのゆうき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.559 Zeichen · 21 Bildschirme
それから暫らくすると、また誰かが私の後をつけてくるような気配がした。振返って見ると誰もいない。そんなことを二三度繰返してるうちに、私は変に身内が薄ら寒くなってきた。そしてすたすたと足を早めたが、やはりすたすたと同じ早さで……といって足音も声もなく、ただその気配だけが風のように、私の後からついてくる。馬鹿馬鹿しいと思ったが、思うほど妙に気にかかって、もう後ろを振向くこともしかねて、益々足を早めていった。そして下宿の前まで来てほっとすると、その気配も何処かへ消え失せてしまった。私は何だか変な気持で、寝静まってるひっそりした通りを透し見て、それから、いつも引寄せたばかりで締りのしてない硝子戸を、少し慌て気味に引開け、身を入れると落付いて静かに閉め、中に垂れている白布をまくってはいった。すると真正面に、停車場で見るような大きな掛時計が、いつもの通りゆるやかに振子を振っていた。それを見て私は、先程からの怪しい気持を払い落してしまった。
然るに、そういうことが何度も起るようになった。明るい電車通りなんかでは、さすがに一度もなかったが、淋しい裏通りを夜更けに歩いていると、何時何処でともなく、誰かが自分の後からついて来るような気配を、ふっと気付くのだった。